バイク事故で死にかけていた(殺しても死ななそうな)ケイさんの退院祝いに、同期の松田と俺とケイさんのお兄さんという不思議なメンツで松田のセダンにて、某テーマパークに行って来た。
Horror Cam Pic

ケイさんの妖怪並の回復力、ジェットコースターが乗っている最中に機械の誤作動で止まったりと、かなり本気で洒落にならないことがあったりしたが、それなりに楽しかったしケイさんのお兄さんの巴さんはケイさんと違ってかなり優しく、たかが2歳差でこうも人間のデキは違うのかと思ったりした。

しかしそれは甘かったと、数時間後に知るハメになった。

帰りの車中、運転してくれていた巴さんが突然「●●霊園に行こう」と言い出したのだ。
いわく、かなり怖い心霊スポットらしい。当然俺は怖いので嫌がったが、満面の笑みで「降ろすよ?」と脅されれば行かないわけにはいかない。
知らない場所、それも山道に取り残されるのは方向音痴な俺には死を意味する。
ケイさんはため息をついて「また始まった」と言うだけだったし、唯一の味方のはずの松田は何故かノリノリで誰も俺の味方はいなかった。

結局しばらくして、霊園に到着した。
巴さんは車を霊園の入口に止め、どこからともなく二本の懐中電灯を取り出し、一本を俺に渡した。

「カズミくんは俺、シュウくんはシズと回ってね」
何しに俺がケイさんと!!!せめて松田と回らせてくださいよ!!!と思ったが、

「シズがいればある程度は大丈夫」
と説得され、お互い嫌々ながら俺とケイさんは霊園を回ることになった。

巴さんと松田は左に、俺たちは右に回り、再び車の前で落合う段取りだった。
あたりは真っ暗、もちろん猫の子一匹いやしない。
怖い。
超怖い。

俺はケイさんのジャケットの裾にみっともなくしがみつきながら恐る恐る前に進んだ。
しかし、期待はずれに特に何もなく半ばまで進んだ。
拍子抜けした俺はちょっと余裕ぶって、

「なんだ、なんもないじゃないですか。別に普通の霊園だし。なにがあるってんですか?」と、聞かなくても良い余計な質問をしてしまった。
するとケイさんはめんどくさそうに

「ここの墓場は、一周回り切っちゃいけねぇんだとよ」
と言った。
意味がわからず聞き返すと、

「一周回ると、余計なもんがついてくるんだと。俺は見た事ねぇけど。お前は危ないかもな」
と不機嫌そうに言い返してきた。
途端にゾッとした。
もう俺たちはほぼ半分以上進んでしまったのだから。
聞かなきゃ良かった。
さっきの俺を殺したい。

「なななんで初めから言ってくれないんですか!!!」
「巴が言うなって言うから。いつものことだし」
しらっと言うので余計頭にきたが、相変わらずズンズン先へ進むケイさんを止めるのが先だった。

「戻りましょうよ!!嫌です!!ついてくんの超嫌!!!」
「うるさい死ね。戻りたきゃひとりで戻れヘタレ。」
そんなこと言われたって戻れるはずもないのに。
引きずられるように俺は後に続いた。
そのとき、



ずる ずる ずる ずる 



何かが引きずられるような音が後方からした。
もちろん俺が引きずられてる音ではない。

「ケイさん、なんか、怪しい、音が」
俺は口をパクパクさせながら訴えたがケイさんは素知らぬ顔だった。
しかし音は段々と近付いて来る。
怖くて振り向くことは不可能だ。



ずる ずる ずる ずる ずる



這いずるような音が押し寄せる。
怖い。

「チッ」
ケイさんは舌打ちすると、小さく「走れ」と呟き、次の瞬間には走り出した。
俺も後に続き、全力疾走した。
音は段々間隔が狭くなり、ずるずるずるずるとこちらを追いかけるようになる。
もう嫌だ、誰か助けてと心底思いながら夢中で走っているうちに、なにか光がグルグルと回転していた。
人魂!!??とビビったがそれは懐中電灯を振り回している松田だった。

「おーい!!おーい!!」
松田を見てこれほど安心したことはなかったし、多分これから先も一生無いだろうがかなりホッとした。
俺は松田に飛び付いてさっきまでのことをまくし立てたが、松田たちは特に何も無かったらしく俺だけが騒いでいた。
巴さんが「意外とつまんなかったね」と笑って車に乗り込んだ。

俺も車に乗り、これでようやく長い一日が終わると息をついた。
が、巴さんが車のライトをつけた瞬間、俺は悲鳴をあげた。

「うわぁああっ!!!!!!!!!!!!手、手、手、手!!!!!!」

車のフロントガラスに、白い無数の手形がついていた。
一瞬、松田たちのいたずらだと思ったが、その手形のサイズはバラバラで老若男女問わず大量についていた。

「うわー。すごい。しかもこれ、」
巴さんがガラスを指で拭くと、手形の一部が少し消えた。

「 内 側 か ら だ ね ? 」
俺はもう泣くしかなかった。
後ろでは松田が「先週洗車したばっかなのに!!」とツッコミどころを間違えて半泣きになっていたが、何事も無かったかのように車は走り出し、誰も口を開かなかった。

後日、松田が職場の駐車場で必死に手形つきセダンを洗車していたが、俺の知ったことではない。 


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