603: 本当にあった怖い名無し 2008/07/14 13:46:26 ID:wt06F8PnO

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私はもののけの類は一切信じていなかったが、
 
一度だけ不思議な体験をしたことがある。
 
写真撮影、廃墟探訪を趣味としていた私は
 
隣町の有名な古い空き家へ何枚か写真を撮りにいった。
古き良き建物でまるで映画で使われるような田舎の一軒家。
にじみ出る汗と頭が痛くなるような蝉の鳴き声を、
今でも鮮明に思い出す。真夏の暑すぎるくらいの日だった。
地主に許可をもらい二階から生い茂る木々、
子供でもいたのだろうか裏庭に散らばるプラスチック製のおもちゃにホース、
何か哀愁の漂うその家と家を囲う様々なモノたちを70枚くらい写真に収めた。
あいにく貧乏で現像機器を持ち合わせない私は知り合いの写真屋で現像をお願いした。
―後日
出来上がった写真に一枚一枚自ら評価をつぶやき、
撮影日や撮影した瞬間の心情を思い出してりしていた。
その時、不思議な写真を見つけた。
二階から見える某湖、確かに何枚か写真に収めたが、
このカット、構図は記憶がない。
次の写真は二階から外の芝生、真下を写した写真。
次は芝生のアップ……芝生……
仕舞には芝生から寝そべって撮れたであろう木々の少し浮き出た根。
ぼやけた無造作にのびた芝生。
…まったく記憶にない。
私はあまり意味もなくシャッターを切らないが、
本当に記憶に無い結局計七枚の謎の写真が撮れた。
その日はかなり取り乱し、友人を呼んではお酒を飲み、
その写真を見せたりして恐怖を紛らわした。
本当に長い夜はそれからだった。

友人も帰り、微酔いでソファーからベッドへ移りエアコンをタイマーにセットし、
明日地主に何となく探ってみようか、やっぱり友人には泊まってもらえればよかった、
なんてくだらない事ばかり考えていた。
―そのうち眠りについていた。

……ザー、ザー
ふと目が覚めエアコンの音を確認した。
眠りについてから二時間はたっていない。
室内に響くように聞こえるエアコンの音がやけに不気味に聞こえ
時計を確認しようとしたその時……

物凄い鳥肌と自分以外の気配を感じた。
霊を信じない自分でも恐怖で汗が首をつたる。
背を壁に付け布団に潜り、三角座りをして気配のする方向を見ようか否か
迷っているときダンッッと床を踏み付ける音がした。
間違いなく鍵はかけている。納まらない変な汗と鳥肌、震えまで出てきた。
間違いなく人ではない、ナニカ。
ダンッッ……ザー…
ダンッッ…ザー
音で大体のイメージはついた。
片足で強く一歩前へ出て片足を引きずっている。
近づいては離れていき、また近づいては離れていく。
円を描くように歩いていたと思う。
私はソイツにまだ見つかっていないだろうか。ただばれたらヤバいとだけ感じていた。


―その時、ポケットに入れっぱなしだった携帯電話のバイブが揺れた。
ばれてしまうと思った私は布団の中でポケットから携帯電話を取り出そうとした……
ブーブー……ブーブー……
やばい、音が漏れる、早く切らなくては切らなくては切らなくては……
ポケットに入れた手を誰かの手に掴まれた。
細くて冷たい、間違いない、女性の手だった。
そこで私は気絶した。

―翌日
友人を連れて地主に会いに行った。
心霊スポットと言われているのは知っていたが、納得がいかない。
何が過去に起きてなぜ私に恐怖をもたらしたのか。
その時は昨夜の恐怖よりも好奇心が勝り、洗い浚い地主から聞き出した。
すると恐ろしい過去がこの廃墟にはあった。

40年くらい前に女性と子供が住んでいたが女性は少し精神を病んでいて、
たまに発狂し、時代が時代なだけに避けられていたこと。
その女性がある日二階から飛び降りるも死ねず、
折れた?足を引きずりながらも前にある湖に子供と入水自殺を計ったこと…
人生初の心霊体験の興奮や好奇心は一瞬で恐怖に変わった。
そして気付いた。
七枚の写真はその女性が飛び降りる目線だったのか…と。



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