僭越ながら自分の恐怖体験を書かせて下さい。
夜書くと恐いので昼間に書きます。
Horror Cam Pic (2)

自分の隣のアパートには自殺物件があります。
かくいう仏さんを第一に発見したのは俺と母なんですが、ベランダから下の階に首吊りでした。

双眼鏡でしっかり見てしまったので間違いありませんし、見てしまったのを後悔しています。

首がぐにゃりと曲がって青紫色に変色した彼女(女性でした)は朝一番に視界に入った最悪なものでした。
まだ息があったらしく、時折びくりびくりと痙攣してました。

その度にロープとベランダの柵がぎしぎし音をたててるようで気味悪く、速攻Kへ電話したのを覚えてます。

話はそんな彼女が死を選ぶ前日から始まっていました。
前日、会社が休みだたので自宅近辺をぶらりぶらりしてると、中年の女性が(仏さまになった彼女)二階の部屋からゴミ置き場へ必死の形相で布団やらラジカセやらカセットコンロやらを出しているのが目に止まりました。

もう部屋にあるものは不燃可燃粗大ゴミ構わず出しているようだったのです。
鏡台や食器、化粧品。冷蔵庫の中身からなんでもありでした。
挙げ句の果てには畳や絨毯まで出し始める始末。

おいおい、いくらなんでもそりゃないだろう?とさすがに声をかけましたが

「いいんです。奇麗にしなくてはいけないんです。」

と弱々しく彼女は答えました。

そうこうしている内に、近所で有名な一階に住むアル中の親爺が登場して訳の分からん説教をしてましたが、彼女は聞いてないか聞こえないようでした。

「すみません」

と口では言いながら、やはり家財道具をゴミ置き場に運びます。
テレビ、コンポ、傘たくさん、掃除機etc。
出るわ出るわ、およそ家財道具が全て運び出された当たりで、アル中親爺が呆れたのか

「これもらってもいいか?おいねぇちゃん?!」

と、今考えるととんでもない事を口走りました。

「どうぞ」

と、言われて親爺はコンポと絨毯、掃除機を自分の家に持って帰りました。

「あなた方も何かいりますか?」

と、弱々しく俺ら野次馬に言いましたが、
恐いのと電波チックなものを感じていたであろう数名は、無言で自宅へ帰路を進めたように覚えてます。

その翌日、彼女はこの世を最悪のやり方で去りました。
彼女の酬いはアル中親爺に降り掛かりました。

忌ま忌ましい出来事から一か月程立ってから、アル中親爺がおかしくなりました。
普段はアル中らしく独り言絶叫飲酒か、野球に大声で突っ込みを入れるだけのうるさい親爺でしたが様子が変です。
アル中の戯言がひどく生々しい戯言に聞こえはじめました。

「なんでお前がここにいるんだ!バカやろう!!次はぶっ殺すぞ!!!」
「帰れっていってんだろう!じゃなかったら酒飲め!!」
「すんません。もうすんません!」

また、親爺も一応働いていたが、留守のはずの隣室からぼそぼそ声がした事もありました。
日増しに暴言、空暴力、異常行動は凄惨を極めました。
壁を蹴飛ばす、サッシを割る(結構力いります)、非常ベルを鳴らす。
挙げ句の果てにKに泣きついたりしてました。

どうも、もう一人住人が増えてそいつが帰らない旨を、Kにろれつが回らない舌で訴えてるようでした。
無論、Kは酔っ払いの戯言には耳を貸さず、その場を納めるだけでしたが、夜中に最大3台PCが来た時は尋常じゃないな?と俺も思いました。

アル中親爺の一人恐怖(?)はエスカレートしてゆきました。
不思議なのは、独り者の親爺なのに(無論友人知人は寄り付かない)、誰かを蹴るような音がしたり、壁にぶつけるような音がしたりしていたのが不思議です。
そのたびに女性の声で

「うううううう」

とか

「堪忍して下さい」

とか聞こえてました。

ある日、ピークに達したのでしょう。
親爺は黒ブリーフ一枚でアパートから飛び出しうろうろしてたのを輔導されました。
その後、絨毯は刻まれ、コンポと掃除機には、粗大ゴミの札が貼られて捨てられていました。
親爺は酒も飲まなくなったようで無口になり、痩せたように思います。
ひっそりと人を避けるようにしてるようです。

時折、仏壇の鐘を鳴らす音が聞こえるようになりました。
別人になってしまった親爺を家人は

「年取ったなぁ」

と言ってますが、俺は違うと感じてます。
絶対、何か向こう側の事件があったのだ。と・・・。


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