私は夜に良くランニングをするのですが、そのコースというのが田舎町なので田んぼと田んぼに挟まれた、たまに野ウサギなんかも飛び出てくるような田舎道なんですね。
Horror Cam Pic (3)

当然、街灯も点々としか無く、道明かりは月影と近くの町の灯に頼るような、そんな寂しい道なんですよ。

ある秋の日。
その日はまさに中秋の名月と言うべき綺麗な月に恵まれて、ほんとにまるで夜空に電気を付けたような明るさの中、いつもより楽しい気分で走っていました。

秋だったので道の両端に広がる田んぼには、刈り終わった稲を円筒型に組んで干してあるんですよ。
で、そんな景色の中を走ってたんです。

でも、その日に限って何か様子が違うんです。
空気が違うと言うか雰囲気が違うのか…。

何が違うのかなぁなんて考えてたその時。

「はぁぁ…」

と大きな溜め息が聞こえたんです。



おかしいです。
自分一人しか走ってない道で溜め息など聞こえていいわけない。

「お?空耳」

わざとらしく心の中でつぶやき少し足を速めました。



しかし、またしばらくすると

「あぁーあ…」

「…そ」

「…なこと」

今度は鳥肌が立ちました。
自分一人しかいないその道で、誰かと誰かが話している。
そんな事あっていいわけがない。

冷たい汗がだらだらと垂れ流しになりながら、かなり速く足を進めました。
何者が何処で何を話し合っているのだ。
こんな月夜にこんな場所で。
だいいち自分は走っている。
同一の二人の会話などいつまでも聞こえていようがない。

そう思ったとき不意にふと田んぼの中に目をやりました。
そして次の瞬間、もう殆ど全速力で半泣きになりながら走りました。
その目線の先に決して見てはならない光景があったからです。

私がそれまで稲を重ねて作った円筒だと思っていた物が、全ていつの間にか装束を着た大男になっていたのです。
名月を愛でながら話し込む大男達。
私は絶対に気付かれてはならない。
恐怖に足を捕られながらも近くの町まで全速力で走りました。

そして友人の家に駆け込み事情を説明して、車で家まで送って貰いました。
当然、友達も家族も誰も信じてくれませんでしたが、昔おばあちゃんが言ってた「田の神様」の話を思い出しました…。

次の朝。
農家の人が何事もなかったかのように稲を組み直していました。


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