コレは俺が小学校の時の話。
 洞窟
神奈川県、鎌倉市、諏訪神社での話だ。

学校の近所に諏訪神社ってのがあった。

ここは御多分に漏れず、
夜になると出るという噂の絶えない神社だった。

言ってみれば子供たちにとっての
禁忌みたいなトコだったのかな。

で、夜中に園諏訪神社で肝試しをする事になった。

もちろん親には内緒、神社の前に集合、てな感じで。
普段どんなに生意気言ってても、
やっぱり餓鬼だったから夜遊びなんて
滅多にあるもんじゃなかった。

だからだと思うけど、
友達のテンションがいつもより高かったね、
もちろん俺も。

集まる事になった日の夕方、懐中電灯にお菓子、
必要無いのに非常時用にラジオや水もリュックに詰めた。

神社の前に集まると、
全員のリュックが同じようにパンパンになってた。

軽く遠足に行くようなモノだって皆思ってたんだ。

メンバーは4人、
分かりやすくする為にA、B、C、俺、としておこうかな。

諏訪神社の入り口には、
子供の俺からしたら
それはそれは長い急勾配の階段があった。

神社そのものが
山を開拓してその上に立てました、
って感じの構造だったからね。

古びた石造りの細い階段で、
上るたびに砂がパラパラ鳴ったのを覚えてる。

階段の両脇は竹薮が鬱蒼と茂っていて、
通路にまでガサガサ伸びてた。

この通路の不気味さもあいまって、
心霊スポットとして認知されたんだろうと思う。

階段を上りきると案外と大きい神社があって、
その横っちょから奥の雑木林に続く小道が伸びてる。

昼でも不気味な小道だったから、
普段はその先に行く事は無かったんだよね。

だからそん時の肝試しは小道の先に行く事が目標だった。

まぁ説明はこんくらいにして話を進める。

まず俺らの中でも一番勝気な性格のAが階段を上って、
後にBと俺、最後尾にビビりのCがついてきた。

俺は表面上は余裕を気取ってたけど、
内心では懐中電灯の明かりって
こんなちっちゃいのかよって泣きそうだったよ。

まぁ階段上がってる間は特に何事もなく、
疲れはしたけど無事神社本体の前まで辿り着いた。

口々に

「なんだよ、大した事ないじゃん」

と言いながら必死に場を盛り上げようとしてたな。

それで、俺だけじゃなくて
皆怖いんだって分かって妙に安心した記憶あるよ。

とりあえず一仕事終えた雰囲気になったから、
座ってジュース飲んだり
お菓子を食べたりして時間を稼いだ。

時間を稼いだというのは
俺が感じたことだから間違ってるかもしれないけど、
とにかくそう思った。

誰も口にしないけど、
皆あの小道に行きたくなくて時間を稼いだんだ。

昼ですら薄暗いそこは、
夜中は完全に真っ暗闇だ。

黒一色だ。

「これで帰ろうぜ」

って一人が言えば、きっと解散になってたと思う。

でも言わなかった。

小学校の頃って、
妙なプライドみたいなのがあるから
そんな事はいえなかったんだろね。

俺は(ひょっとしたら全員が)ビビりのCが
帰ろうって泣き出すのを期待していたけど、なかった。

結局2~30分経ったぐらいの時に、
Aが

「そろそろ行くか」

と言った。


その瞬間に俺達の小道進撃が決定し、
もう後戻りは出来なくなった。

誰もそんな気分じゃないのに、

よっしゃー!

とか言いながら陽気を装ってたよ。

やっぱり先頭はA、
付かず離れず俺とB、
でCが最後尾だった。

あんな暗闇を、
頼りない懐中電灯一つで進むAを、
素直に尊敬したね。

小道は中に入ってもやっぱり暗くて、
それから曲がりくねってた。

ひょっこりと顔を出す枝やデカイ葉っぱが、
人やら得体の知れない何かに見えて怖かった。

先頭を勇ましく進むAもそれは同じらしくて、
曲がり角で何度かビクッと体を強張らせていた。

5~6個の曲がり角を越えた辺り、
距離的には100M位進んだところで、
ぽっかりと道が開けて、
ちょっとした広場みたいなところに出た。

振り返ってみても、
神社や街の明かりはぜんぜん見えなかった。

俺は正直、こんなトコに来たのを心底後悔してたよ。

家で漫画でも見ながら寝てた方が良かったって思った。

道が終わってしまったからか、
みんな懐中電灯でいろんな所を照らして
何か探しはじめた。

俺には何を探してたのかは
良く分からなかったけど、
取り合えずそこらを適当に照らした。

探してたのは1分かそこらだと思うけど、
Bが興奮した声で俺達を呼んだんだ。

「なぁ、チョットこっち来てみろ!」

つー感じで。

駆け寄ってBが懐中電灯で照らしている壁を見た。

正確に言うと、
植物に遮られて半分隠れている壁の穴を見た。

穴はかなり大きくて、
俺達くらいの身長なら苦も無く入れるくらいだった。

俺達には、この穴が何かすぐ分かった。

防空壕だ。

俺達の住んでる所は、
結構そこらじゅうに防空壕の穴があったからな。

またしてもAが
率先して中に入ろうと言い出した。

断わってビビりだと思われるのも嫌だから
仕方なく中に入った。

月明かりも一切届かない洞窟だったなぁ。

中はじめじめしていて、
水滴が垂れている所もあった。

長さは思ったより短くて、
それだけが俺の救いだったな。

一番奥はほんの少しだけ広く造られていて、
寛ぎのスペースのようになっていた。

俺達はもちろん寛げるような心境じゃあなかったけどな。

とりあえず、無言になりながらも
懐中電灯で何かを探した。

何かここにきた証拠を持ち帰りたかったのかもしれない。

そんで、各々が地面照らしたり壁を見たりしていた。

Aは土を靴で地面を蹴って掘り返したりしていたと思う。

でも、俺は壁のある一点を見て、目が釘付けになった。

それが丁度俺の目の高さにあって、
俺の顔のすぐ側にあったから。

湿った土の壁から、
白くて細い「何か」得体の知れない棒が
2~3本突き出していたから。

震える手を押さえて少し上を照らすと、
今度は白くて丸い器のようなものが見えた。

テレビとかでしか見たこと無かったけど、
土でひどく汚れていたけど。

俺は瞬間的にそれが何か理解した。

指だった。

人の指と、きっと頭の骨だった。

俺は生きてきた中で一番でかい声で叫んで、
それから走って逃げた。

皆も俺に同調して走って追いかけてきた。

誰かが転んだらしく、

「待ってくれ」

なんて声も聞こえたけど無視した。

俺は一刻も早く家に帰って
寝なきゃいけないと思ったから。
家に着いたら布団をかぶって
ブルブル震えながら眠った。

次の日の朝、
親にばれてこっぴどく怒られたけど、
心底ホッとした。

学校でもあの時の話はしなかった。

俺が見たのかなんなのか分からないし、
第一本当に見たのかも分からなかったからな。

だからひょっとしたら、
たまたまそれっぽく見えた白い石だったのかもしれないし、
怖い怖いと思う俺が見た幻だったのかもしれない。

冷静に考えれば、
警察とかがそんな骨を見逃す筈は無いとも思う。

そう思って、俺は一度だけ、
真昼間に確認しに行った事がある。

でも、確認できなかった。

何故か、どう頑張っても、
あの夜の防空壕は見つからなかった。


以上、信じる信じないは自由だけど、
ここ行くなら気をつけてな。

俺は、今までコレより怖い事態に陥ったことは無い。


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