会社の先輩だった。
プロポーズ
 
職種的に女の少ない仕事で、実際自分の居たグループは女が私のみだった為、結構まわりから可愛がられる感じで扱われていた。
 
勘助も同じかと最初の頃は思っていたのだが、だんだん馴れ馴れしさが増してくる。
 
私を名前で呼んだり、自分が一番私を可愛がっているようなことを言ったり。
 
体に触れるようなことはないが、仕事の指示をやけに近くで出してきたり。

仕事中もひっきりなしに話しかけられて、邪魔で仕方が無い。
飲み会では隣から動いてくれない。
 
移動するといつの間にか近くに居る。

だんだん気持ち悪くなって、そのうち生理的に受け付けなくなってきて、ガン無視or怒鳴る勢いで言い返すようになった。
 
相談をしていた人以外の目にはただの好き嫌い程度に見えていたと思うが、無視しても話しかけるなと言っても近寄ってくる勘助が、嫌で嫌で仕方が無かった。
 
会社では、私の嫌いっぷりが笑いのネタにすらなっていた。
 
おそらく会社では、私が勘助を嫌っていると知らないのは当の本人くらいのものだったと思う。
 
それなのにプロポーズされた。
 
当然、即拒否。
ところが断った直後から、何故か行動がエスカレート。

仕事中にメモを回してくる。女子高生か。
「君の気持ちはわかってる」「確かに結婚はまだ早い。恋人期間も大事だ」等。

自宅最寄り駅にいる。一体どれだけそこで張ってたんだ、という時間。
慌ててホームにUターンしたりもした。

ある日自宅へ電話がかかってきた。
 
もちろん番号など教えていない。
聞くと電話帳の同じ苗字へ順番にかけたと誇らしげに言う。
 
私の苗字はごくごく普通の名前。
心底ぞっとした。

私の応対があまりにおかしかったせいか、母親に問い詰められた。
 
母親のアドバイスにより上司に相談→上司から勘助に注意。
たまたまその上司を勘助は尊敬していて、会社での行動はおとなしくなった。

しばらくして自宅に分厚い手紙が届いた。
 
「上司からはこう言われたけれど君がそんな事を言うはずが無いってわかってるよ」
便箋20枚がぎゅうぎゅうに押し込まれた封筒には、見たこと無い程大量の切手が貼られていた。

燃やした。

相変わらず電話もかかってくる。事情を知る母親が〆るが、効果は無い。
 
ここで聞く勘助と違って「申し訳ありません」とか言う。
だがまたかけてくる、のループ。
 
のうち上司の配慮か単なる偶然か、勘助は遠方に異動になった。
 
最後にみんなに挨拶を配っていた中、私にも渡された。
 
拒否る訳にもいかず受け取ると、みんなと違う何か入っている。

指輪だった。

貴金属に興味の無い私は、自分の指の号数を知らなかったが、怖い物見たさというか、試しにはめてみたらぴったりだった。
 
友達に付き合ってもらって、無理やり突っ返した。

しばらくは手紙がきていたが、未開封で捨てていた。
 
しかし偶然家が引っ越すことになり、私も別の理由で退職し、無事音信不通。

ここで報告されている事にくらべたら、肉体的には何もなかったし、大した話じゃないのかもしれない。
 
だが、まだストーカーという言葉すらなかった頃の話で、今なら警察にも相談できたのかなと思うとちょっと切ない。
  
 


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