私は当時障がい者施設で働いていました。
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その施設は周辺にグループホームを持っていて、そのうちの1つは職員の宿泊が必要だったので、毎日交代で職員が1人泊まっていました。
まだ私は職員になってから日も浅く、わからないことだらけでした。宿直も先輩の職員の方がついてくれていたので、初めは仕事を覚えることに必死でした。

次第に職場にも慣れてきて、職員の人たちとも仲が良くなってきたころでしょうか。あまり聞きたくなかった話を耳にしました。
どうやら私たちの施設には幽霊がでると言うのです。
男子寮の一階に白い女の人が、そしてグループホームには髪の長い女性が出るのだとか。

私はとにかく幽霊やお化けが大の苦手で、信じないけどいると思うと怖くなってしまうタイプです。
職員の何人かから話を聞きましたが、みんな口を揃えて同じことを言うので、きっと本当にいるのだと怖い気持ちはどんどん膨らんでいきました。
それからというもの、宿直の時は男性寮の方を見ないようにしたりとビクビクしながら仕事をしていました。

そしてついに来てしまったのが、グループホームでの1人宿直です。
施設での宿直とは違い、男性職員がいないので1人でグループホームを管理する形になってしまいます。
利用者は8人いましたが、全員夜の9時には就寝するので、そこからは1人で暗いグループホーム内を歩いて仕事をします。

先輩職員が言っていた話によると、寝ていると廊下から足音がする、職員の宿直室に女の霊が出る、テレビを消していても夜中についてしまう、という現象があるそうです。
私は怖くて怖くて、すばやく仕事を終わらせて、暗い廊下を歩き回らなくていいようにしました。
しかし私には霊感がなかったのか、それから1年ほど1人宿直を繰り返しましたが、特に怖いものを見ることはありませんでした。

その日も特にいつもと変わらぬ勤務でした。
利用者とご飯を食べ、片づけをし、入浴介助をし、就寝の準備を手伝いました。
その頃はもう幽霊なんていないじゃないかとたかをくくっていたので、仕事が終わってからは宿直室でテレビを見ながらソファーでゆっくりしていました。

連勤だったため疲れていたのでしょうか。気がついたらソファーで寝ていました。
うっすら目を開けると、部屋が真っ暗になっていました。

「あれ?電気消したっけ?テレビは消したっけ?」

寝ぼけながらも、布団を敷いて寝るため動こうとしました。
ですが、体が動きません。
まるで体全体が鉛のように重く、汗も滝のようにかいていました。
自分の身に何が起きているのかわからずもがいていると、部屋の中心に髪の長い女性が立っていることに気づきました。
 
一気に心臓の鼓動が早まります。

暗くて顔が分からないため、きっと利用者の誰かが宿直室に来たのだと自分に言い聞かせました。宿直室は利用者の出入りが多いのです。
 
ひょっとして何か異変があって私を呼びに来たのかと思い、なんとか声をかけたかったのですが、声がでませんでした。
 
その女性はしばらく私を見ていたようですが、何もせずに部屋の外へ行ってしまいました。

気がつくと朝になっていて、私はちゃんと布団を敷いて寝ていました。いつの間にか自分で布団を敷いたのだと思います。
 
それから朝ごはんを利用者と食べたのですが、そこで昨日私の部屋に来た人がいるかどうかを問いました。
全員に聞いたのですが、誰も行っていないといいます。
 
確かに夜中はトイレ以外の部屋で行動するとこは禁止されていますし、宿直室へ夜に利用者が来たことは今までにありません。

考え込んでいた時、私は気がつきました。
利用者は全員髪が短かったのです。


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