俺が警備員をやってた頃の上司Tの体験談
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とある夏の日、
いつものように交通誘導警備をしていた
俺の上司T支社長とK隊員は仕事中に
若い女性2人をナンパし、ケータイの番号を交換した。

仕事が終わった後、
Kのケータイに女性から電話があり、
次の日は休みということもあって、
これから4人で夜のドライブに行こうということになった。

適当なところで落ち合い、
女性2人を会社の車に乗せた。

車を運転しているのはKで
女性Aが助手席に座り、
後部座席にTと女性Bが座った。

さて、これからどこへ行こうかという話になったが、
特に行きたいところも無いし、とりあえず浜辺でも
散歩しようかいうことになり、
適当な浜辺で車を停めて4人は車を降りた。

KとA、TとBが2人1組となり、
先にKとAが歩いて少し間を空けてから
TとBがその後ろを歩いた。

喋りながら浜辺を少し歩くと急峻な崖があり、
その岩肌には階段があった。

KとAがその階段を上り始めたので
Tがついていこうとすると、
Bが疲れるから嫌だとぐずりだした。

しかたなくTはBをおんぶして階段を上った。

上る途中、先を歩くKの

「なんだよ・・・」
「見てんじゃねぇよ・・・」

という声が聞こえた。

階段を上りきると、
KとAが崖の上の空地で何かを探している。

Kの話によると、階段を上る途中ずっと、
崖の上からおばあちゃんと小さい女の子が
自分たちのことをじーっと見ていて、
その視線がうざかったので

「なんだよ」
「見てんじゃねぇよ」

と文句を言っていたのだが、
階段を上りきる前に崖の上が死角になる部分があり、
そこを通り過ぎて崖の上に来ると
さっきまでいたはずの2人の姿が見えなくなっていたので、
びっくりして捜していたというのだ。

しかし辺りには人が隠れられるような場所など無く、
気のせいだったのだろうと強引に結論づけて
4人はその場を後にした。

車に戻った4人は次はどこへ行こうかと話し、
幽霊が出ると地元では有名な
廃病院に行こうということになった。

ところが、Bの様子が何やらおかしい。

廃病院へと向かっている車の中でBは急激に青ざめ、
呼吸は荒くなり、尋常じゃない量の汗をかき始めた。

「どうした?おい!」

「だいじょうぶ?」

TとAが呼びかけるが、
Bはうつろな目で唸りながら、

「戻って・・・、戻ってよ」

というだけだった。

とりあえず廃病院の手前で車を停めて様子を見たが、
Bの状態が元に戻らないので
しかたなく今来た道を引き返した。

途中、Bがついさっきまでとは
まったく別人の老婆の声で

「帰してぇぇ、帰してぇぇ」

と言い始めたのでKは怖くなって

「うわぁ~」

と悲鳴をあげ、車のスピードを上げた。

これは本物だと思ったTは、

「なんだおまえ、
なんでこの娘にとり憑いてんだ!」

と隣に座っているBを怒鳴りつけると、
Bはものすごく憎々しげな表情で
Tを睨みつけた。

その表情があまりに恐ろしくて
Tはそれから何も言えずに黙っていた。

さっきの浜辺に戻り
車を停めるや否やKは外に飛び出て、

「ほら、着いたぞ!」

と叫び、運転席のシートを前に倒した
(会社の車は軽の2ドア)。

Bは車の壁とシートの隙間から
這いずるように外へ出ると、
崖に向かって走り出した。

KとAはその後ろ姿を呆気に取られて見ていたが、
ひょっとしてBが崖から飛び降りるんじゃないかと
思ったTは後部座席から降りながら

「K!押さえろ!」

と叫んだ。

Kは猛然と走り出し、Bの後を追った。

車から降りたTがさらにその後を追うが、
前の様子がおかしい。

Tの目には崖へ向かって走っていく
3人の後ろ姿が見えた。

Aは自分の後ろにおり、
辺りには自分たち以外誰もいない。

だが、Tの目には確かにBと重なって見える
もう1人の後ろ姿が見えた。

Kが階段の手前でBに追いつき、
その場に押さえつける。

すると、Bと重なって見えていた後ろ姿が
ふっとBから離れ、Tの目にはっきりと見えた。

夜の暗がりにはっきりと見えたそれは、
老婆の後ろ姿だった。

その老婆はそのまま階段を走って上っていく。

Tが見上げると崖の上には女の子の姿があった。

老婆が崖の上まで辿り着き、
女の子の隣に来ると同時に、
ふっと2人の姿が消えた。

一方、Kに抱きかかえられたBは

「え?・・・あれ、どうしたの?」

と言っている。

Aが

「あんた、今のこと憶えてないの?」

と訊くと、Tにおんぶされて
崖の上に行ったところまでは憶えているということだった。

Bはさっきまでの様子が嘘のように元気になったが
他の3人にはもう遊ぶ余裕は無く、
結局その夜はそれでお開きになったそうだ。



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