近藤は珍しく昼ごろから、原田の家を訪れた。
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今日は、夏休みの計画を話すためではなく、まじめに女子高生失踪事件について議論をするためだ。
ただ単に、女子高生が失踪するだけなら、自分たちの管轄ではない。
しかし、オカルトがらみの変な噂が付いているとなると、ほっておけなくなる。

近藤が原田優奈の家に行くと、先に着いていた清水葵が、優雅に紅茶を飲みながら、パソコンで動画を見ていた。
それに対して、結城は席に着いているが画面から目を背けている。
原田優奈は、動画を見ておらず、台所で何やら作っていた。
清水さんは、いったい何を、見ているのだろうか?

画面を覗くと、全身を黒いローブで包んだ仮面を付けた人物が、床の魔法陣に磔にされた少女の腹を割き、内臓を取り出していた。

凄惨な映像だ。
BGMの類は一切なく少女の悲鳴だけが、スピーカーから流れる。
それに対して、清水さんは平然と目を背けず映像を凝視している。

題名を見ると、『魔女の生贄 その4』とある。
アクセス数は約2000。少なくはないが、あまり多い方ではない。
全部で5まであるが、内容とアクセス数に大差はなさそうだ。

「何かの映画ですか」
僕は清水さんに声をかけた。

「噂だと、本物の殺人映像って話なんだけど...」
「本物の殺人映像ですか...」

「こういう映像のことを何て言うんだっけ。たしか、ム○ミンに出てきそうな名前だったんだけどな」
清水がもどかしそうに近藤ににたずねる。

それは、スナフキ○だ。
何となく音感だけは、似ているが、明確に違う。

この映像は、俗に言うスナッフフィルムだ。

『スナッフ・フィルム(ムービー)』とは、乱暴な定義をすると「人間が殺害される時の様子を収めた映像」だ。

実際の殺人の様子じゃないかと噂される映像は、腐るほど存在しているのだが、実在だと確認されたものは少ない。
ルーシー・ブラックマンさんが殺害された際、殺人の映像が撮られているのではないかと、週刊誌等で取り上げられたこともあった。
しかし、結局、フィルムの存在は確認されなかった。
それ以外にも、猟奇殺人事件が起こるたびに、その存在が噂されては消えていった。

大抵のものは、無名の映画のワンシーンか、映画マニアが趣味で作ったものだ。
本物のわけがないんだ。
極稀に、海外では、「ウクライナ21」など本物が公開されるが、幸運なことに日本製(?)の本物が公開されたことはない。

ただし、公開されたものがないだけで、実は日本にも本物が存在している。
しかも、ある程度の人間が実際に見ている。
そう、あの連続少女誘拐殺人犯「宮崎勤のビデオ」だ。
自分が誘拐した少女を殺害したときの映像らしいのだが、現在、どこにあるのかは判っていない。
ときより、偽物がネットにあがるが、本物は、警視庁の奥深くに厳重に保管されているのだろう。

「この映像、本物だと思う?」
「良くできていますが。まず、偽物じゃないですか。スナッフ・フィルムは、ほとんどが、昔の映画の殺人シーンを編集したものだったり、自主製作映画って話ですよ。本物の殺人映像は『ウクライナ21』くらいかな」
「本物の場合もあるんだ」
「極稀にですけどね。アップした人が誰からは判らないんですか」
「能力を使ってみたけど、ネットカフェからで判らなかった」
「じゃあ、製作者ですね。たぶん、自主製作だと思うんだけど...」

ネット上の掲示板、ブログを丹念に読んでいくと、「魔女の鉄槌」という作品が候補に挙がった。
Go○gleの検索では、直ぐに出てこなかった。

「どうも、一度ネットに上げたけど、過激過ぎて、削除要求が出たみたいね」
大手のサイトでは、著作権違反の作品は削除され、過激すぎるものは年齢制限を受ける。
そして、サイト運営者の警告を無視したものは、アカウント自身を削除されてしまう。

しかし、ある海外の動画サイトで、コピーした作品を見ることが出来た。
こちらもアクセス数が600程度のさらにマイナーな作品。

粗筋を読んでみる。
『街では、家出少女の失踪事件が増えていた。『家出少女たちが、魔女の生贄になっている』
そんな噂が出始めたころ、ネットで、『魔女の生贄』という題名のスナッフ動画が流れ出した。
多くの人は偽物だと考えたが、地域生活課の女性警察官は1人捜査を始めた』

「近頃の噂と、似てるな」
「やっぱり、噂は、その映画を元にしたものか。映画製作者たちが、意図的に宣伝用に流した可能性も出てきたな」と結城。
確かにその通りだ。近頃、Y○UTUBEとかの動画サイトでは、宣伝目的にオフィシャルな動画が乗せられたりする。
どこかの集団が、話題作りに流したとしても、おかしくない。
しかし、噂だけが1人歩きして、大元の動画に関する情報が噂から消えて、動画はネットから削除だとしたら、はた迷惑な話だ。

「映像見てみますか? 1時間くらいだよ」
面白い映像ではないが、今日は時間はたっぷりある。

「そうね」
「この動画は、途中から見えない奴だな。1時間くらいの短編だから最初から最後まで見るしかないな」
「怖いんですよね」と原田。
「こういうの嫌いなんですか?」
「怪談とかホラーは好きなんですけど...スプラッタ系は嫌いです」
怪談やホラーは、良いんだ...
女性って結構、怖いの好きだよな。

「この手の殺人シーンに凝っている奴は、ストーリー自身には凝らないのが多いから、残酷シーンを抜かせば、たぶん怖くないよ」
結局、ネットの映像を皆で見ることにした。

 
【ムラムラ


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