ホラー映画でグロいシーンが出て来ると「大丈夫、これは単なる血糊。シロップなだけ。」とか「これは特殊効果。俳優はお金をもらって演技してるだけ。」と冷静に考えようとしませんか?
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しかし、今も昔も映画をヒットさせる為に賢い宣伝方法を使ったり、観客の目を欺く凄い技を披露する人達がいて、その余りの内容故に「これは本当の殺人がおさめられているのでは無いか!?」と物議をかもし、挙げ句、裁判にかけられてしまうような作品があります。
 
本日紹介するのは、そんな犯罪容疑をかけられたホラー映画5本。本来なら動画をご紹介したいところですが、グロ耐性の無い読者の為に、文字を掲載するにとどめておきました。
 
では、続きから詳細をどうぞ。
 
【幻想殺人】
 
カルロ・ランバルディと言えば、スティーブン・スピルバーグ監督作品『E.T.』のE.T.の作成で有名なクリーチャー制作の第1人者ですが、忘れてはいけないのがスプラッターを得意とするルチオ・フルチ監督の『幻想殺人』(1971年製作)で見せた生きたまま腹を割かれた犬の特殊効果でしょう。
 
ランバルディの技術は余りにも巧みだった為に、イタリアの裁判所がフルチ監督に動物虐待の罪で2年間の懲役を課すまでに至りました。しかし、複数に及ぶ撮影クルーの証言とランバルディ本人が偽物の犬を裁判所に持ち込んで虐待が無かったことを証明し、フルチ監督の懲役は取り下げられることとなりました。

【食人族】
 
スナッフのジャンルとして最も有名なのは、なんと言っても1980年にルッジェロ・デオダート監督が製作した『食人族』でしょう。
 
ドキュメンタリータッチのこの映画は、4人の撮影クルー達が人を食べる人種をフィルムにおさめる為にアマゾン上流にむかい、撮影のためと大義名分を掲げて原住民をレイプしたり放火したりと蛮行をつくしたところ、(当然ですが)原住民達を激怒させてしまいます。その後、同情の余地もない彼らが返り討ちにあうその様子が全て記録されており、問題のフィルムは後日、行方不明になった4人を探しに行った人達によって発見される、という作品です。
 
公開された同作は、本物のスナッフフィルムであるという噂がたち、プレミアから10日後に没収されてしまった上に、デオダート監督はわいせつ並びに殺人罪が適用されました。

同氏の無実を証明する為に、キャストとクルーメンバーはイタリアの裁判所に赴き、映画は特殊効果を使用して撮影したものであったことを証明する必要が発生。また、キャストがイタリアのテレビ番組に出演して生きているという確固たる証拠を見せてもなお、どのようにして串刺しのシーンを撮影したのかを説明しなくてはならなかったほどだったとか。
 
このような努力の結果、殺人罪だけが取り下げられました。というのも、キャストの死は偽物ですが、同作に登場する鉈を使ったサルの首切りを含む動物の殺傷シーンは本物(撮影後はスタッフが美味しく召し上がったんだとか)。

その為、デオダート監督、プロデューサーのジョヴァンニ・マッシーニ氏とF・D・チネマトグラフィカ氏、脚本家のジャンフランコ・クレリチ、配給会社のユナイテッド・アーティストに対して、わいせつ罪と動物虐待で有罪判決が下り、それぞれに4ヶ月の執行猶予が課されることになりました。
 
なお、デオダート監督は、イーライ・ロス監督作品の『ホステル2』で生きた男性の足から新鮮な人肉を削ぎ落として美味しそうに食べる役を演じています。

【ギニーピッグ2:血肉の華】
 
ホラー漫画家の日野日出志氏が監督した超グロスプラッター映画。オリジナルの『ギニーピッグ』は複数の男性がひとりの女性を執拗にいたぶる ストーリー性の無い胸くそ悪いドキュメンタリータッチの映画でしたが、続編である本作は、相当ゴアに耐性が無いと直視出来ない人体切断描写が満載で、日野日出志氏の神髄を見せつけられるような内容です。
 
『ギニーピッグ』シリーズは80年代に作成されており、先述したように『1』と『2』は拷問、手足の切断、そして殺人シーンが非常に生々しく、ハリウッドスターのチャーリー・シーンが『ギニーピッグ2』を本物のスナッフフィルムと勘違いし、FBIに通報したほど。

FBIは、フィルムの出所を探ったり、配給者であったChas Balun氏を尋問するなどして調査しましたが、『ギニーピッグ』シリーズ3作で使用された特殊技術を解説する『メーキング・オブ・ギニーピッグ』を観たことで、これが実際に行われた殺人では無く作り物だということが証明されました。
 
日本では、80年代後期に発生した東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の犯人であり、2008年には死刑執行された宮崎勤が本シリーズの内の1本を所持していたことから、その名が知られることになりました(しかし、残虐性の高い『1』や『2』では無く、ギャグ路線の『4』であったことから、この映画が彼に犯罪に走らせる影響を与えたのかは疑問の残るところです)。

【スナッフ】
 
スナッフと呼ばれるジャンルの中でも、おそらく、「本物の殺人映像だ」と大々的に宣伝して観客を呼び込もうとした唯一の映画。
 
配給会社のモナーク・リリーシングは、フィンドレイ夫妻のエクスプロイテーション映画製作チームが製作した『スローター』というチャールズ・マンソン事件に影響を受けた映画の権利を手に入れましたが、これが本当に陳腐でどうにも観客を呼び込めなさそうな出来映え。

そこで、同配給会社のオーナーであり、低予算の映画製作者アラン・シャックルトンは、この映画のラストに手を加えてクレジットを消し、『スナッフ』というタイトルでリリースすることに。
 
陳腐で出来の悪い『スローター』のシークエンスの後に響く「カット! 」の声。すると、撮影クルー達が去り始め、残った数人が突如として女性スタッフを襲い、八つ裂きにして腸を引きずり出す。このシーンで終われば、まだ何となく映画っぽく感じますが、最後の最後にふたりのクルーの「フィルムが切れだ」、「もうズラかろう」という話し声だけが収録されていて、現実味を帯びさせることに成功しています。
 
この映画は「命が安い南米だからこそ実現した映画! 」という、いかにも本物のスナッフであることを裏付けるような宣伝文句と共に登場。Variety紙はこのマーケティングを「でっち上げ」と暴露しましたが、予想以上に噂が長引き、ニューヨーク地方検事のロバート・M・モーゲンタウ氏はこのフィルムが実際の殺人を撮影したのか否かの調査に乗り出すこととなりました。モーゲンタウ氏は、劇中で殺害された設定になっている女性を見つけ出し、彼女が今も元気に暮らしていること警察に確認させ、この映画が作り物だということを明らかにしました。

【New Terminal Hotel】
 
2010年製作のOVA作品である本作は、80年代にティーンのアイドルとしてヒットしたカナダ人俳優コリー・ハイムの遺作。
 
この作品はスナッフフィルムかどうかという疑問の声があがった訳ではありません。撮影場所のペンシルバニアのジョージ・ワシントン・ホテルに、消火活動に来た消防職員が撮影に使われた部屋に入った際、惨劇があったと思わせる部屋の様子に驚き、警察に通報。J.R.ブリス警察署長は、その部屋の有様を「35年勤めて来た中で最も恐ろしい光景だった。」と語っています。
 
刑事達は、この部屋が映画の撮影に使用されたものであり、オーナーの意向で、撮影が終わった後も再撮影の可能性を考えて部屋をそのままの状態にしておいたという真実を知るまで、8時間捜査することとなりました。

再度になりますが、これらの映画を視聴するのはあくまでも自己責任でお願いします。

     


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