今はじいさんばあさんが住んでるんだけど、むかし俺が住んでた家は物凄く古い。おまけに完全圏外。
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壁と壁の間に猫が挟まるなんてしょっちゅう。
当時の俺はとにかくこの家が嫌いだった。
しかもそこの地区は凄い田舎でコンビニはないわ自販機はないわで結構不便なとこだった。
とりあえず俺らガキは山登って秘密基地とかツリーハウスとかブランコとか作って遊ぶしかないし、老いたジジババはやたら怖いし、とにかく最悪だった。
そんなんでも、毎日楽しく過ごしてたけどな。

で、本題。
家の隣には祠みたいな、なんつーかな、石を積んでしめ縄みたいのをなんかしてあるのがあるわけよ。
やたら不気味。
あとちょっと離れたとこには神様の手形って呼ばれるのもあった。
なんか指が七本ある手形みたいな石。

でな、その祠と、地区の最奥と言える場所にある神社みたいなとこ。
(ちなみにここもすげえ不気味。昼でも薄暗くて赤い色の錆びたブランコが余計恐怖心を煽る)
なんかしらんが、夜六時以降は立ち入り禁止で近付くの禁止。
近くに住んでる人間は家を出るのも禁止。
ジジババに口を酸っぱくして言われたね。

まぁその時までは普通に当たり前の事だったし守ってたんだが、ほら、そのとき俺は中2だったんだけどさ。
あれじゃん。厨二真っ盛りだったの。
なんでもできるとか思ってたのよ。
うん。夜中一時、おまけに13日の金曜。家抜け出して神社行ったんだよね。
怖いとはまったく思わなかった。
ちなみになぜか手には携帯の充電器があった。

でも、いざ神社の鳥居の前に来てみたら、一瞬で震え上がった。
手入れされなくてみっともなく伸びた雑草。
風でギイギイと揺れる赤いブランコ。
何年も前からある、古びた幼児の靴。
なにより怖かったのは、お賽銭箱に立て掛けてある日本刀。
もうこの時点でおしっこ漏らしそうだった。涙目ぐしょぐしょ状態。

ここで帰れば良かったのに、俺は鳥居をくぐった。
よくわからないけど、自然に足が動いてたんだ。
まず赤いブランコの隣を通過。
ほんとブランコ怖い。やめてほしい。
次に幼児の靴を恐る恐る跨いで、日本刀の元へ。

本物かな、なんでこんな所にあるんだ?ブランコ怖いからギィギィ言うな。

俺は引き寄せられるように手を伸ばして、触れる直前で違和感に気付いて止まった。
あれ? なんか聞こえね?
風の音に混じって、微かにさ。
なんか聞こえた気がしたんだ。
びびって辺り見回す。けどなんも変わりはない。
強いて言うなら、行くときにはついてた懐中電灯と、神社の隣の家の明かりが消えてたくらい。
……え、あれ?

うん。おかしいよね。
懐中電灯、何回スイッチ押してもつかない。
神社の隣の家に住んでる兄ちゃんは暗いのが嫌いで一日中電気つけてるくらいだから、あかりが消えるはずがない。
あれ?あれ?え?あれ?
もうパニクった。汗が溢れて額に髪が張り付いてたけど、そんなん気にならないくらいパニクってた。
とりあえず帰ろうって思ってさ、体をUターンさせるわけよ。

うん。いたね。いたのよ。
なんか袴みたいなのを着た、女か男かわからん、顔やら肌やらが真っ黒な、それが。
口をぱくぱくさせながら、動けない俺。
ズルズルと何かがを引きずるような音をたてて近づく、『それ』。
俺が動けないうちに鼻先に触れるくらい近づいた『それ』は、充血した目で俺を見ながらさ、

「………、……」

ぶつぶつ、なんか言ったんだよ。
まず目が怖くて聞き取るどころじゃなかった。
なんかキロッて効果音が似合いそうだった。
おまけに声がまた怖い。脳に直接響く感じ。
俺はもう限界。おしっこもらした。

で、気付いたら家の布団。
地区の偉い人やらが俺の顔を覗き込んでてさ。
俺が目を開けたのに気付いた瞬間、凄い剣幕で
「馬鹿野郎!!!!」
って怒鳴られて殴られた。
もちろんグーで。
俺号泣。
ばあちゃんはなんか顔青くして。
やっぱいわくがあったわけだよね、うん。
怖くて聞かなかったけど。

それ以来神社には近付いてない。
でも引っ越すまで毎晩のように、夢でそいつに見られ続けてた。毎日おねしょしそうだった。

とりあえず、今現在その神社についてなにもわかってない。
勇気をだして祖母にきいてみたが教えてくれない。
関係ないけど赤いブランコはまだあるらしい。
こわいからやめてほしい。
ほんとに怖かった。
思い出すだけでおしっこもらしそう。
余談だが、神社にあった幼児の靴の片割れが最近になって家の物置で見つかった。泣いた。


     


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