我が社の社屋は、
営業に来た他社の社員が辿り着いた安堵感で号泣したり、
会社説明会を受けに来た学生がまとめて全員道に迷って、
結局中止になった事もある。
ところが、
「レンズ状の窓のついた、
昭和っぽいデザインのクリーム色のビル」
を目印にして道順を説明をすると、
必ず全員がたどり着く事が出来るようになった。
このビル、既に誰も利用していない廃ビルなのだが、
比較的背が高いうえに古めかしいデザインをしている為、
周囲から浮いているので、目印には最適なのだ。
ところがこのビル、
近年になって取り壊されてしまった。
しかし、このビルの取り壊しを知らなかった連中が、
その後もしばらく、
このビルを目印として案内をしていたのだが、
一向に誰も迷わない。
皆、
「レンズ状の窓のついた、
昭和っぽいデザインのクリーム色のビル」
を目印に、
我が社に辿り着いていたのだ。
周囲に同じようなデザインのビルは無い。
「地下の食堂でカツ丼食ってきた」
「地下はゲーセンだ。
アフターバーナーが動いていた」
という話まであるが、さて…?